最近、世界遺産関係の番組をよくみています。これまでに韓国の慶州(キョンジュ)歴史地域、中国の九寨溝(チウチャイゴウ)、チェコのプラハ歴史地区をとりあげたものを見たのですが、世界的に認められている遺産ってやっぱり人を惹きつけるものがありますね。ちなみに社団法人日本ユネスコ協会連盟のホームページによると、世界遺産は「地球の生成と人類の歴史によって生み出され、過去から引き継がれた貴重なたからもの」とされています。文化遺産・自然遺産・複合遺産3種で計851ある(2007年7月現在)のですが、すべて有形の不動産です。日本でも「原爆ドーム」「白神山地」「法隆寺地域の仏教建造物」「屋久島」など14の文化遺産と自然遺産が登録されています。
ところで国際連合の専門機関であるUNESCO(国際連合教育科学文化機関)は有形の遺産だけではなく、無形遺産の継承も行っていますね。無形遺産というのは、芸能(民族音楽・ダンス・劇など)、伝承、社会的慣習、儀式、祭礼、伝統工芸技術、文化空間などが対象で、日本では「能楽」「人形浄瑠璃文楽」「歌舞伎」があります。
と、ここまでは日本のものも登録されているので馴染みがあるのですが、UNESCOの遺産継承活動にはもうひとつ「世界の記憶」というのがあるのをご存知ですか?危機に瀕した歴史的記録遺産を最新のデジタル技術を駆使して保全し、研究者や一般人に広く公開することを目的としたユネスコの事業です。選定基準は、世界歴史に重大な影響をもつ事件、時代、場所、人、主題、形態、社会的価値を持った記録遺産となっているのですが、日本からの登録はまだありません。これまでに、韓国の朝鮮王朝実録・訓民正音解例本・承政院日記、中国の清代歴史文書・古代ナシ族トンパ文字による歴史的文書、アメリカのオズの魔法使い、セルビアのニコラ・テスラの記録など多数が既に登録されています。
そうした中、日本でもこれと似たような活動(記録遺産のデジタル化)をしていることを知りました。UNESCOの活動と結びついていないのが実に惜しいところですが、財団法人京都国際文化交流財団とキヤノン株式会社が共同で、かけがえのない資産である日本の文化財を最新のデジタル技術により保存し、後世に継承することを目的とした『文化財未来継承プロジェクト』(愛称:綴<つづり>プロジェクト)を発足したのです。初年度(2007年3月~2008年2月)は、メトロポリタン美術館に所蔵されている「八橋図屏風」(尾形光琳筆)、「老梅図襖」(狩野山雪筆 妙心寺天祥院旧蔵)、シアトル美術館「琴棋書画図」(狩野孝信筆 龍安寺旧蔵)、「洛中洛外図屏風(上杉本)」(狩野永徳筆 米沢市上杉博物館蔵)、「松林図屏風」(長谷川等伯筆 東京国立博物館蔵)の原寸大複製がつくられたとのこと。(ちなみに1点の複製品をつくるのに、500万円~1000万円かかるらしいです)こうした活動をきっかけに、将来的にはUNESCOの「世界の記録」のひとつとして、かけがえのない日本の文化財が世界的な継承遺産として伝えられていって欲しいものです。