2010年6月19日土曜日

2010年6月19日(土) BP crude oil catastrophe

事故を起こしたDeepwater Horizon
今日、久しぶりにブログを書いています。Twitterを始めて以来、日々思うことはつぶやいてしまうため、なかなか長文を書く気になれないのが正直なところ。とはいえ、たまには140文字でつぶやききれないこともあり、今後はそういったものをブログにしたためていきたいと思う。ということで、今、思うことが140文字で収まらないのが4月20日に起きた原油流出事故というわけです。
 
【事故の概要】
2010年4月20日22時頃(現地時間)、米南部ルイジアナ州沖のメキシコ湾にある、国際石油資本(メジャー)英BP社が操業する石油掘削基地 Deepwater Horizon (画像) で大きな爆発があり、基地が炎上。11名が行方不明、17名が重軽傷を負ったもの。この爆発事故で水深約1500メートルの海底と基地を結ぶパイプの3箇所が破損して大量の原油が流出した。
 
いや、これがですね、利益優先で安全対策を軽視してきた結果起きた事故のようなんです。関係者の言い分も理解できないわけではないです。新聞報道によると「こうした短縮の背景には、「工期が1日遅れると、リグのリースや請負会社への支払いで100万ドルのコストが発生する」といい、事故発生時点で43日間の工期の遅れがあった。担当者たちにはかなりの焦りがあったとみられている」ということのようです。当事者であれば「ただでさえ会社に損失をもたらしているのに、これ以上費用や時間の面で会社に迷惑をかけたくない(上司に叱られたくない?)」と思うのが人間心理的に普通かもしれません。でも、だからといって、安全対策を軽視していいわけはありません。ちなみに報道の範囲で、BP社がどんな安全対策を軽視したのかまとめてみました。
 
【BPの軽視した安全対策】
(1) 油井からの強いガスの噴出が指摘され、ガス噴出を抑え込むのに頑強なパイプの固定化が求められていたため、石油サービス会社から、油井の中央に通す鋼管の位置決めを行なう「センタリング装置」を21機使うよう提案されていた。ところが、BP側は工期の遅れを気にし、21機の設置にはさらに時間がかかるとして6機に減らし踏み切った。(石油サービス会社とは、知る人ぞ知るハリバートン社)
(2) セメントが確実に固まっていることを1日かけて評価する「セメントボンド検層」を拒否した。
(3) 海底の油井上部には、緊急時に自動的に原油の流出を遮断する噴出防止装置が取り付けられていた。同装置は二重三重の安全対策が取られ、油の流出を止める「最後の手段」とされる。だが、BPは噴出防止装置が働かず原油が流出した時の対策を想定していなかった。
(4) カナダは北極圏で海底油田を掘る場合、同時に予備油井掘削の準備も求めている。BPは今回の事故後ですら、カナダ政府にこの規制の撤廃を求めた。
(5) ガスがパイプから噴き上がり、場合によっては爆発する事態を防ぐために、油井の周囲に「ライナー」と呼ばれる被覆を使用するよう求めていた。しかしBP社は、700万ドルから1000万ドルの追加費用が必要となることから、ライナーを設置しないことを決めた。
(6) 掘削時に油井にたまった泥を循環させる作業を適切に実行しなかった。その結果、油井の底に泥が残り、ガスや堆積物を吸収して、油井の土台部分のセメントがさらに弱くなった。具体的には、油井のすべての泥を循環させるには6〜12時間を要するが、この作業は4月19日にわずか30分間行なわれただけだった。
(7) BP社は「ロックダウン・スリーブ」も使わないと決定した。これがもし利用されていたら、海底から出ている油井の上部が保護されていたかもしれない。
(おまけ) BP社CEO Tony Hayward氏の無責任発言。"There's no one who wants this thing over more than I do, I'd like my life back.", "I simply was not involved in the decision-making process", "data indicates there is oil in very low concentrations" ← これらの発言、本当にCEOの立場にある人のもの?後から謝罪しているところからすると本当なんでしょうけど、会社が大きすぎて本音が出たのかも知れない。
 
まあとにかく枚挙に暇が無いんです。調べれば調べるほど暗澹たる気持ちになります。結果論となりますが、そういった安全対策を全てとったとしても、費用は数十億円~100億円くらいで済んだと思います。ところがオバマ政権からは、2兆円近くの被害補償を求められています。こうした事故を起こした際に、法律上支払えばよいとされている金額の4倍近くの金額ですが、恐らくこの金額だけで済むことはないでしょう。ちょっと驚いてしまうのは、BP社にとって約2兆円拠出は、2009年の利益の1.2倍程度ということ。経営の重荷になることは間違いないけど、どんだけ稼いでるんだろう。日本では売上高すら2兆円に満たないところがほとんどなのに、そんなに儲かるものなのだろうか。きっとそういう安全軽視を伴う利益優先体質がもたらした富なんでしょう。
 
肝心の原油流出量ですが、事故から2ヵ月経った現時点までに、1989年のアラスカ沖事故(これまでの米史上最悪の原油流出事故)における原油流出量の10倍は超えているのだとか。わずか4~5日でアラスカ沖で流出した量が出てしまっているようです。しかも、この流出を阻止するための対策はことごとく失敗していて、実効性ある対策は8月頃までかかってしまうのだとか。
 
いずれにしても、この事故がもたらす教訓は忘れてはならないと思う。やはり決められたことは決められたとおりにしなければならない。代償は余りにも大きい、、、。安全に近道はありません。